【和歌】雨を詠む

部屋の外 雨の帳が おりる夜

乙女のすがた しばしとどめむ

 

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季節は梅雨、部屋の外は雨。

部屋の中はふたりきり。

ふりしきる雨が帳のようにおりた夜。

どうか雨よ、そのままで。

君の帰りを妨げて、君の姿をもうすこし

眺めていたいから。

 

僧正遍照

天津風 雲の通い路 吹き閉ぢよ

をとめの姿 しばしとどめむ」

に着想を得た歌。

 

 

【和歌】愛猫を悼んで詠む

君がため 生きながらえた 花の色

身を焦がしつつ 露に濡れゆく

 

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私が幼稚園生のころから、

ずっと連れ添った愛猫がいた、

彼は私のいちばんの理解者だった。

中学時代、私はあまりに苦しくて、

一度だけ手首を切ろうとしたことがある。

結局怖くて死ねなくて、ただ泣きじゃくる

私の手を、彼はそっと舐めてくれた。

 

4月の終わり、その彼が亡くなったことを

実家の両親から聞かされた。

コロナで帰省も叶わず、最後に会ったのは

2ヶ月ほど前だった。

 

「君がため生きながらえた」は

彼のために、彼が死ぬまでは死ねないという

思いであり、

彼がいたために、生きてこられたという

思いでもある。

 

彼がいたから生きながらえた私。

鮮やかな彩を添えるはずの、花。

その花は、後悔、懺悔、恋しさ、哀しさ、

様々な感情に染まり、

その痛切な感情の熱量に身を焦がしながら、

涙の露に濡れる。

その色は、本来の鮮やかな彩ではないだろう。

けれどそれを、

彼が望んだわけでもないだろう。

 

それでも生きるからには、

離別の悲しみや記憶はしだいに薄れ、

平然と笑うようになる。

私を生かしてくれた彼のためにも、

きっと私はそうやって、

また色を取り戻すのだろう。

 

 

【和歌】雪を詠む

朝起きて 一目散に 窓あける

雪の予報の 朝は早起き

 

窓の外 降れる白雪 眺むとて

寒さは知らぬ 窓際の猫

 

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二首とも、大学の授業で詠んだ歌。

 

二首目は、YKKの窓のCMの情景を詠んだ。

外にしんしんと降る雪、

それを窓から眺める猫。

猫たちは雪を見つめるけれど

「この寒さを、この子たちは知らない」と

締めくくるCMだった記憶がある。