【和歌】愛猫を悼んで詠む

君がため 生きながらえた 花の色

身を焦がしつつ 露に濡れゆく

 

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私が幼稚園生のころから、

ずっと連れ添った愛猫がいた、

彼は私のいちばんの理解者だった。

中学時代、私はあまりに苦しくて、

一度だけ手首を切ろうとしたことがある。

結局怖くて死ねなくて、ただ泣きじゃくる

私の手を、彼はそっと舐めてくれた。

 

4月の終わり、その彼が亡くなったことを

実家の両親から聞かされた。

コロナで帰省も叶わず、最後に会ったのは

2ヶ月ほど前だった。

 

「君がため生きながらえた」は

彼のために、彼が死ぬまでは死ねないという

思いであり、

彼がいたために、生きてこられたという

思いでもある。

 

彼がいたから生きながらえた私。

鮮やかな彩を添えるはずの、花。

その花は、後悔、懺悔、恋しさ、哀しさ、

様々な感情に染まり、

その痛切な感情の熱量に身を焦がしながら、

涙の露に濡れる。

その色は、本来の鮮やかな彩ではないだろう。

けれどそれを、

彼が望んだわけでもないだろう。

 

それでも生きるからには、

離別の悲しみや記憶はしだいに薄れ、

平然と笑うようになる。

私を生かしてくれた彼のためにも、

きっと私はそうやって、

また色を取り戻すのだろう。