【和歌】満月の夜に詠む
ぬばたまの 黒髪の海を すべる月
うち眺めたる 一人寝の夜
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黒く艶やかな髪にさす月光。
美しき髪の上を滑る月の光を、
他に見る人もなく、ぼんやり眺めながら
一人寝をする夜のさみしさ。
すべるは、滑ると統べるの掛詞。
黒髪の海の上を滑るようにさす月光。
そして、人や海を統べる月という存在。
海の波の満ち引きは、月の影響で生じる。
女には月の障りがつきものであり、
また月は人の理性を左右、統治するもの。
狼男や、アストルフォの伝説などのように。
だから、「統べる月」。
月の光を浴びた女の美しい髪は、
しかしこのStay at homeの状況において、
誰にも見られることはない。
その美しさを女だけがぼんやりと眺め、
さみしい一人寝の夜を過ごす。